ゼオライトおよび酸化チタンなどの複合酸化物分離膜を付加したメンブレンリアクタの開発を目標に(1)三相アルコキシド法による製膜手法の確立と(2)分離膜上に触媒層を析出させたメンブレンリアクタの評価を行った。本研究の目標の一つは(1)と(2)の複合であるが、(1)の制御条件の検討に時間がかかってしまい、1年間では(2)との複合まで進まず、それぞれを評価するにとどまった。 (1)三相アルコキシド法による製膜に関して、従来までの膜厚の制御だけでなく、膜状析出物の構成粒子の形状制御について検討を行った。この結果液相の温度を30℃から60℃で温度制御を行うことで、繊維状粒子の集合からなる膜状析出物から0.5ミクロン程度の粒子の集合からなる膜状析出物に制御できることがわかった。更に両形状の膜をガラス基板上に製膜し、ヨウ化カリウムの分解反応による光触媒特性を検査したところ、既往の研究で用いられているゾルゲル法により製膜された酸化チタン膜に対して光触媒として70%程度の分解能力を持つことがわかった。 (2)現在申請者の研究室で開発中の水蒸気選択透過性の分離膜上にゼオライトを触媒担体層として析出させ、Ruを担持させ触媒として使用した場合の二酸化炭素のメタン化反応についてのメンブレンリアクタの評価を行った。特定の成分比で調製したゼオライト製膜用ゾル分離膜上に5回程度ディップコートし焼成した後、水熱処理をすることで分離膜上に非常に多孔性に富んだ触媒担持用のゼオライト層を持ったメンブレンリアクタの作製に成功した。このゼオライト膜作製過程において、わずかながら分離性能が低下し、透過係数が大きくなる傾向が見られたが、触媒活性に関しては従来本研究室で作製してきたゼオライト膜と同程度の活性がみられ、400℃、0.1MPaの条件における操作でほぼ理論平衡転化率でガス処理できることが確認された。
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