本研究ではホウ素源として新しい原料であるトリメチルホウ酸(以下TMBと略す)を用いてp型ダイヤモンドを合成し、そのHall効果の測定から電気伝導率及びホール移動度を算出した。また、一般的なホウ素源であるB_2H_6によりドープされた膜の電気特性と比較検討した。下地基板にはダイヤモンド単結晶(100)面、(111)面、シリコン(100)面上に作成した高配向性ダイヤモンドを用い、p型ダイヤモンド膜中のホウ素量は二次イオン質量分析により測定した。 膜中のホウ素含有量が同じ値で膜物性の比較を行うと、TMBを用いた膜のホール移動度は、B_2H_6を用いた膜と同様に、ホール濃度の増加に対して減少する傾向が見られた。TMBを用いた場合では気相中のB/C比が200ppmのときにホール移動度が300cm^2/V・sであり、B_2H_6を用いた膜のホール移動度と比較して1/3程度の値であった。ホモエピタキシャル膜中のホウ素量が比較的少ない場合、電気電導率の活性化エネルギーは0.4eV程度であるとの報告例が多いが、我々が作成したホウ素ドープ膜の活性化エネルギーはを測定すると、0.2eV程度の値であった。アクセプタ準位が低いことは電気的に有利であると思われるが、膜の結晶性など今後評価するべき項目は多いと思われる。一方、高配向膜上のp型膜では数10cm^2/V・sの値が得られた。 TMBを用いた膜の特性が劣る理由としては、TMBを用いた膜の質が不良である可能性もあり、今後の検討を要する。後者の原因としては、成膜条件をB_2H_6によるド-ピングで最適といわれる条件に設定したことがある。今後は、TMBを用いて作成したp型ダイヤモンドの膜質をラマン等で評価するとともに、TMBを用いたド-ピング条件を最適化することが必要である。
|