メタン等への選択的官能基導入反応開発の一環として、申請者は金属酸化物系触媒を用いるメタン等の低級アルカンの高温光酸素酸化反応によるアルデヒドの選択的合成法を見いだしている。本研究では(1)シリカ担持酸化バナジウム触媒を用いる低級アルカンの光酸素酸化反応について、低級アルカンの種類による反応性の差異の検討、(2)それぞれの低級アルカンに対する最適表面状態の解明、(3)アルケンの光酸化反応等への展開を目的とした。 その結果、(1)メタンとエタンの光酸化反応では反応温度依存性、水蒸気導入効果、照射光波長依存性に著しい差異が認められた。すなわちメタンの光酸化反応は493K付近の温度領域でのみ進行するが、エタンを用いた場合にはより広範な温度領域で良好に進行した。反応系への水蒸気導入によりメタンの光酸化反応は阻害されたが、エタンの場合には逆に促進された。さらにメタンの光酸化には、エタンの場合よりもより短い波長の光照射が必要であることが判明した。また、(2)ゾル-ゲル法により調製した触媒はエタン光酸化反応に対しては特に高活性を示したが、メタンの場合には比較的低活性に留まった。含浸法で調製した触媒の場合、担体の焼成処理温度に対してメタンとエタンの場合には全く逆の依存性が認められた。以上よりメタン、エタンの活性化に最適な表面状態が異なることが示唆された。これらの触媒の表面分析結果との対比によって、メタン光酸化反応には孤立したオルトバナデ-ト種が活性を示すのに対して、エタン以上のアルカンの場合はより集積した種でも反応に関与できるものと推察された。(3)アルケンの光酸化反応について酸化亜鉛系触媒等を用いて検討した。反応温度493Kにおけるプロペンの光酸化反応では、酸化亜鉛への極く少量の酸化モリブデン等の添加によって選択性が著しく変化し、主生成物としてエタナ-ル、プロパナ-ルの生成が認められた。
|