研究概要 |
昨年度までに明らかとなった抗原依存的に会合する抗体Fvを用いた抗原濃度測定法を更に発展させるために、Fvの会合を光学的に検出する系を作製した。東北大学工学部熊谷教授らより提供された抗リゾチーム抗体HyHEL-10の大腸菌Fv発現系を用いてFvを精製した後、イオン交換カラムでVH,VLを分離した。VHをフルオレセインで、VLをロ-ダミンXでそれぞれN末端特異的にラベルし、両者を混合し蛍光光度計で両者間の蛍光共鳴エネルギー移動を測定した。その結果、洗浄操作なしで5分以内で溶液中の抗原濃度測定が可能なことが明らかとなった。 また細胞膜表面受容体と抗体Fvを結合させて細胞の増殖活性で抗原濃度を測定する試みとして、まずVH,VLそれぞれと二量体形成により活性化されるマウスエリスロポエチン受容体(mEPOR)とのキメラ遺伝子一対を作製した。FvとmEPORとの結合部位は、mEPORと相同性の高いヒト成長ホルモン受容体(hGHR)の立体構造とFvとのドッキングのモデリングにより決定した。作製したVH-mEPOR,VL-mEPORをIL-3依存性マウスproB細胞株Ba/F3に導入し、G418による選択後1μg/mlのリゾチーム存在下で生育する細胞を選択した。クローニング後の細胞はIL-3非存在下でリゾチーム濃度依存的に増殖速度、生存率が変化し、至適濃度下においてはリゾチーム、IL-3非存在下に比べて最大5倍の増殖活性が認められた。なおBa/F3細胞はIL-3非存在下では速やかに死滅した。またc-fos-luciferaseレポーター遺伝子を用いたfos遺伝子活性化のアッセイでも、わずかながらリゾチームによる活性化が見られた。今後結合部位を微調整することにより更なる増殖活性上昇をはかりたい。
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