1.正電荷を与える脂質、N-(αトリメチルアンモニオアセチル)-ドデシル-Dグルタメートを用いたリポソームにヒートショックプロテイン(HSP)プロモーターとβ-ガラクトシダーゼの遺伝子をコードするプラスミドを包埋した。ヒト脳腫瘍細胞株に、この遺伝子包埋リポソームと同じく正電荷脂質を用いたマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)とを同時に導入して、高周波磁場を照射したところ、β-ガラクトシダーゼの発現の増加が確認された。 2.シフト温度等を変えて遺伝子発現の程度を調べたところ、βガラクトシダーゼの発現は41℃で最大となり、通常の培養温度の約9倍量のβ-ガラクトシダーゼが生産された。 3.インターフェロンβ(IFNβ)遺伝子をコードしたプラスミドを用いて、同様の実験を行ったところ、IFNβの発現は検出されず、細胞への増殖抑制効果も観察されなかった。HSP自体の発現の増加は確認できているので、プラスミドが高周波磁場で誘導されていることは確認されたが、IFNβの発現のためのプラスミドの改良の必要性があると考えられる。 4.高周波磁場で発現を増大させるため、温熱で遺伝子発現が上昇するMMTVプロモーターを用いて、同様な実験を行った。MMTVプロモーターをコードしたプラスミドは通常、デキサメサゾンなどの薬剤で誘導されるが、これらの薬剤が存在しなくても高周波磁場照射により目的遺伝子であるIFNβの発現が2倍程度上昇することが確認された。また、IFNβの発現によりヒト脳腫瘍細胞の増殖が抑制されることが確認された。
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