研究概要 |
Pseudomonas putida BH株の有するフェノールヒドロキシラーゼは、トリクロロエチレン(TCE)を効果的に分解できるが、その発現はフェノールによる正の制御を受けるため、この酵素の誘導のためにフェノールが必須であった。そこで、本研究では、構成的にTCEを分解できる菌株を育種することを目的に、本菌株からクローニングしたフェノールヒドロキシラーゼ遺伝子(pheA)の制御遺伝子(pheR)を遺伝子工学的に改変し、構成的にフェノールヒドロキシラーゼを発現する変異株を構築することにした。 まず、pheAの発現が構成的になるように、既報論文の知見から、pheR, pheA遺伝子を含む8.1kbのNotI DNA断片から、pheRの一部を欠失した遺伝子(ΔpheR)をPCR法によって増幅した。また、pheRタンパクのcis-acting領域を含むpheA遺伝子の増幅を行い、両者の増幅を電気泳動により確認した。次に、増幅した二つのDNA断片を結合させるため、両DNA断片を鋳型として、再度、PCRによる遺伝子の増幅を試みたが、ΔpheR, pheAを含むDNA断片の増幅には至らなかった。プライマーと種々条件をかけて、実験を試みたが、当該研究期間内にこのDNA分子の構築には成功しなかった。一方、得られた組換えDNA分子の土壌細菌の染色体埋め込みの予備試験として、広宿主域トランスポゾンベクターpUTKmをE. coli S17-1からP. putida KT2440株へ接合伝達で導入し、10^5/受容菌の頻度でカナマイシン耐性株を得た。ハイブリダイゼーションにより、耐性株の染色体にカナマイシン耐性遺伝子の埋め込みを確認した。今後、上記の組換えDNA分子が得られれば、この系を用いて構成的にTCE分解できる遺伝子を土壌細菌の染色体へ埋め込み、新規の有用TCE分解細菌を育種できると考えられる。
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