【研究の概要】ピューロマイシン(PM)耐性細菌におけるPM不活化機構は、アセチル化酵素によるO-メチルチロシン残基中のアミノ基のアセチル化であることが知られている。ところが、同じヌクレオシド系抗生物質であるブラストサイジンS生産菌Streptomyces morookaensis JCM4673は、PMのアミノヌクレオシドとO-メチルチロシン間のアミド結合を切断する新たな酵素を産生する。これまでに多くの抗生物質不活化酵素が報告されているが、このように加水分解によって不活化するタイプのものはβ-ラクタマーゼ及びその他2、3種の酵素を除いてほとんど知られていない。本研究は、この不活化酵素をS.morookaensis JCM4673株の菌体抽出液から精製し、その性質を明らかにすることを目的としている。 【結果】JCM4673株の無細胞抽出液を粗酵素液として、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー及びゲルろ過等により本酵素を精製した。精製酵素は、SDS-PAGEにおいて単一のタンパク質として得られ、その移動度とゲルろ過から算出した分子量は約68kDaであった。酵素反応に対する至適温度及び至適pHはそれぞれ、45℃、pH7.5〜8.0であり、15〜45℃、pH5.5〜9.0で比較的安定であった。本酵素は、DTTにより活性化される一方で、Cu^<2+>、Zn^<2+>、Hg^<2+>及びN-bromosuccinimideによって強く阻害されたことから、本酵素はSH酵素であることが予想される。本酵素がアミド結合を切断することから、プロテアーゼとしての可能性が考えられたが、BSA、hemoglobin、casein及びgelatinに対する分解活性は認められなかった。しかしながら、アミノペプチダーゼ阻害剤であるactioninにより活性阻害を受けること、アミノペプチダーゼの基質であるアミノアシルβ-ナフチルアミドに対して作用することから、本酵素の本態がアミノペプチダーゼである可能性が示唆された。 以上の成果については、平成8年度日本生物工学会大会に於いて口頭発表を行った。
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