H_2O_2を定量する方法として、ペルオキシダーゼと発色試薬を組み合わせた酵素法が現在最も広く用いられている。一方、研究代表者らは、これまでに開発してきた界面鋳型重合法により得られる樹脂に、銅イオンを配位させた高分子錯体が、H_2O_2と高い反応性を示すことを見いだした。この反応系を用いることにより、H_2O_2分析系を確立することを本研究の目的とした。 銅イオン鋳型樹脂の合成は以下のように行った。架橋剤ジビニルベンゼンに機能性界面活性剤オレイン酸カリウムを含む水溶液を加え、プローブ型超音波発生装置により乳化させた。これに鋳型であるCu^<2+>を加え錯形成させた後、0℃でγ線重合(10Mrad)を行った。非鋳型樹脂はCu^<2+>を加えないことを除き同様に合成した。このようにして得られた樹脂に銅イオンを配位させたものを触媒として、H_2O_2分解反応について検討した。 コントロールとして用いたフリーのCu^<2+>あるいはオレイン酸銅はH_2O_2分解活性を有していなかった。これに対し鋳型、非鋳型樹脂ともにその銅錯体はH_2O_2を効率よく分解することができた。特にCu^<2+>濃度が低い領域では鋳型樹脂の方が高い反応性を示し、いわゆる鋳型効果が見られた。鋳型樹脂においては、実際の表面官能基量はオレイン酸の仕込量より少なくなってしまいCu^<2+>吸着サイトが飽和したため、Cu^<2+>高濃度での活性が低かったものと思われる。また、本系にグアヤコールを添加すると、その酸化生成体由来の480nmの吸収が見られ、これを用いたH_2O_2の比色定量が可能であることが示された。
|