P.denitrificans IFO12442はその細胞膜電子伝達鎖に硝酸イオンを窒素にまで還元する一連の脱水素酵素を持っている。電極を電子供与源としてP.denitrificans細胞固定機能電極を作成し、電極の応答特性を検討した。 ヘキサシアノ鉄酸(II)イオン(Fe(CN)_6^<4->)をメディエータとしたとき、電極は亜硝酸イオンに対して小さな電流応答を示したが、硝酸イオンに対しては応答しなかった。一方、デュロハイドロキノン(DQH_2)をメディエータとしたときには、硝酸イオン、亜硫酸イオンの両方に応答を示した。この事実はP.denitrificansの電子伝達系を参考にして次のように理解できる。DQH_2とFe(CN)_6^<4->の酸化還元電位はそれぞれユビキノン(UQ)とcyt.cと同程度の値をもつので、DQH_2は硝酸レダクターゼ、亜硝酸レダクターゼ両方の酵素の電子供与体となり、Fe(CN)_6^<4->は亜硝酸レダクターゼに対してのみ電子供与体として機能する。DQH_2を用いる場合、阻害剤アンチマイシン、ミクソチアゾールの存在下では電極は硝酸イオンに選択性を示すようになったが、DQH_2が亜硝酸レダクターゼの直接の電子供与体として機能しないとすれば、この結果は通常の阻害剤効果として説明できる。 硝酸イオン、亜硝酸イオンは、水質汚染の指標因子となり、また細菌由来のものやNO代謝生成物として尿、唾液、胃液などにも含まれており、環境、食品分析では重要な測定対象である。本法はこれら両イオンに対する簡便な測定法としてその可能性を有する。
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