塩素ガスは、毒性の強い腐食性ガスであるため、排出ガス中や工場内の塩素ガス濃度をモニターできるセンサの設置が切望されている。これまでの研究では多結晶体を固体電解質として用いていたため、粒界にわずかなすき間ができ、それにより10ppm以下の低濃度域の応答が十分に得られないことが考えられた。そこで粒界の無い塩化物イオン伝導性ガラスをセンサ材料に用いることを考えた。本研究では導電率の高い陰イオン伝導性ガラスを開発し、さらにこの塊状ガラス固体電解質を塩素ガスセンサに応用するにある。 その結果、PbCl_2-PbO-SiO_2系三成分ガラスで100℃における導電率が10^<-6>S・cm^<-1>以上となり、非晶質アニオン伝導体としてはきわめて高い導電率が得られた。急冷によりそのガラスを隔壁とするプローブを作製し、塩素ガスセンサに応用したところ、約50ppm以上の高濃度域ではほぼ理論起電力に一致した値を示し本ガラスのイオン輸率が1であることが確認されたものの、やはり応答速度の低下や低濃度域では起電力低下が起きた。 この原因を調べた結果、電極反応以外に固体電解質内の酸化物と測定塩素ガスによる副反応が存在し、これにより低濃度域での起電力低下や応答速度の低下が起こることが明らかになった。この結果を基に、純粋な塩化物を用いて真空中で溶融して緻密性を高めた多結晶固体電解質を用いた素子が、最も優れた応答を示すということが結論として得られ、酸化物を含まないガラスの作製およびセンサへの応用ということが今後の課題として残った。
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