抗菌特性などの優れた銀含有ガラスを作製する場合、銀が貴な金属であるために思うような銀含有量が得られないという問題がある。この問題に対処するためにガラス融液中での銀の熱力学的性質を明らかにする必要がある。本研究では銀含有ホウ酸塩ガラスの作製を念頭に置き、ホウ酸塩ガラス融液中への銀の溶解度を熱力学的観点から調べた。 銀のガラスへの溶解反応は酸化反応であるので、銀の溶解度は温度、酸素雰囲気に依存する。そこで、様々な組成のガラスに対して同一条件で銀の溶解度を評価するパラメータとして、酸化銀の活量係数を用いた。実際にはNa_2O-B_2O_3-Al_2O_3系を用い、この系のガラス融液と金属銀をアルミナるつぼ中で大気雰囲気下、所定温度で保持した。平衡到達後ガラス中の銀を分析し、ガラス中の酸化銀濃度、ならびに銀の活量が1、酸素分圧が0.21atmという条件を用いて、ガラス融液中での酸化銀の活量係数を計算した。 酸化銀の活量係数はNa_2Oの濃度が増加すると急激に低下し、酸化銀がNa_2Oと同じ塩基性酸化物としての挙動を示すことが明らかになった。正則溶液モデルを用いて無限希薄時に酸化銀の活量係数を求め、この値に及ぼすNa_2OとAl_2O_3の影響を相互作用係数という因子で評価したところ、1423Kでそれぞれ22.1と0.9という値が得られた。また、溶解度の温度依存性より、金属銀が酸化してガラス融液に溶解する際のエンタルピー変化を見積もった。
|