酢酸カドミウム水溶液にアンモニアあるいはトリエタノールアミンを加えてカドミウム錯塩水溶液を調製し、そこに硫化剤としてチオ尿素水溶液を加えた後、70℃で3時間保持して結晶質CdS微粒子を合成した。得られたCdS微粒子の結晶構造は、アンモニア配位の場合に立方晶閃亜鉛鉱型、トリエタノールアミンの場合に六方晶ウルツ鉱型、それらの混合配位で2相共存となった。そして、保持温度による構造変化が認められなったことから、カドミウムの硫化反応速度を制御することによってCdSの結晶構造が変化することが明らかとなった。また、得られたCdSの形態も硫化反応速度の影響を受け、トリエタノールアミン配位では0.2μmの球状粒子、アンモニア配位では50μmの花弁状であった。これらの結果に基づいて確立したCdS薄膜形成条件は、配位子を混合配位とし、保持温度及び時間を70℃及び3時間とすることであった。得られた薄膜の導電率は、紫外光照射により増大することが分かった。 塩化カドミウムを種々のカルボン酸ナトリウム水溶液に溶かし、カドミウム錯塩水溶液を調製した。セレノウレア(SU)溶液は、セレンの酸化防止剤である亜硫酸ナトリウム水溶液にセレノウレアを溶かして調製した。これら2液を混合し、種々の温度及び時間保持することにより結晶質CdSe微粒子を合成した。得られたCdSe微粒子の結晶構造は、60℃で立方晶閃亜鉛鉱型であり、温度の上昇に伴い六方晶ウルツ鉱型になり、配位子の違いによる結晶構造への影響は認められなかった。また、原料モル比を変えることによりCdSeの化学組成が制御できることが明らかとなった。Cd:Seの比が7:3及び5:5の組成の六方晶ウルツ鉱CdSeについて、バンドギャップを測定した結果、5:5の比のサンプルのバンドギャップは1.74eV、7:3のサンプルは1.42eVであった。1.74eVのバンドギャップはSeの4p軌道からCdの5s軌道への電子遷移に帰属でき、1.42eVのバンドギャップはカドミウムリッチによりドナー準位が形成したためと考えられた。
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