研究概要 |
1.1995年、我々はスカンジウムトリフラートがアルコールとカルボン酸無水物のエステル化反応の極めて有効なルイス酸触媒であり、DMAP等の既存の塩基性もしくは求核性を有する触媒と比較し、遥かに高い触媒能を示すことを報告した(J.Am.Chem.Soc.1995,117,4413)。今回、更にルイス酸性とかさ高さが期待できるスカンジウムビス(トリフルオロメタンスルホン)アミドを調製することに成功し、エステル化反応の触媒として試したところ、スカンジウムトリフラート以上の触媒活性を示すことを見つけた。 2.既に我々はスカンジウムトリフラートを触媒に用いたエステル化反応が、パラニトロ安息香酸無水物存在下、アルコールとカルボン酸から直接進行することを見い出している。この反応はカルボン酸とパラニトロ安息香酸の混合酸無水物が一旦できてから選択的にエステル化が進行しているものと考えている。今回、この方法を選択的分子内エステル化反応に応用することに成功した。反応溶液を希薄にして、極めて触媒活性の高いスカンジウムトリフラートを用いることで、分子内エステル化を選択的に行うことができた。また、スカンジウムトリフラートは多配位を取り得るため、ω-ヒドロキシカルボン酸の両末端と配位し分子内反応を有利にすることが予想される。 3.スカンジウムトリフラートを触媒に用いた芳香族カルボン酸に対するエステル化反応で、芳香属アルコールを用いた時、反応速度が極めて高いことを観測した。この実験結果から方向族アルコールと脂肪族アルコールの混合系でも、芳香族アルコールに対し選択的にエステル化を行うことに成功した。
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