研究概要 |
共役主鎖構造からなるポリ(ベンズイミダゾール)類は機能性高分子として有用性が高いが、剛直な分子構造のため有機溶媒への溶解性に乏しく、詳細な分子構造の解明や成形加工性に難がある。また、既存の合成法は高温あるいは強酸存在下といった厳しい反応条件が必要であるために基質が制限され、溶解性を向上させるための官能基の導入が困難であるという問題点がある。本研究は共役系ポリ(ベンズイミダゾール)の可溶化の手段として、シクロデキストリン等の大環状化合物をポリマーに包接させることに着目した。つまり、本研究では錯体触媒を用いた温和な条件下でシクロデキストリン存在下で3,3′-ジアミノベンジジンとジオール類のイミダゾール環生成反応を伴う重縮合を行い、共役系ポリ(ベンズイミダゾール)にシクロデキストリンが包接した可溶性ポリ(ベンズイミダゾール)ロタキサンを合成し、詳細な分子構造や物性の評価を行なうことを目的とした。本年度はジオールとして1,1′-フェロセンジメタノールを用いて重合を行ったところ、シクロデキストリンが包接したポリロタキサンは得られなかったが、ポリ(フェロセニレンベンズイミダゾール)が得られた。このポリマーはDMFやDMSO等の有機溶媒に可溶であり、常磁性体であることが磁化率及びESR測定からわかり、この磁性はFe(III)に基づくものであることがメスバウアー分光測定より明かとなった。また、サイクリックボルタンメトリー測定においては、走印を繰り返すにつれて、Fe(II)→Fe(III)に由来する酸化ピーク強度が弱くなると共に高電位側へのシフトが観測された。
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