有機結晶-ポリマーハイブリッドの合成

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08751029
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 佐田 和己 大阪大学, 工学部, 助手 (80225911)
• キーワード: ポリマーハイブリッド / 包接化合物 / 分子認識 / 結晶構造解析 / ホストーゲストの化学 / 胆汁酸ステロイド / ポリエチレンオキシド / 超分子

研究概要

本研究では低分子の形成する結晶格子の中に高分子鎖を閉じこめ、有機結晶と高分子の複合体が形成されるかどうかを検討した。さらに、形成された有機結晶-ポリマーハイブリッドの結晶構造や結晶中での高分子鎖のコンフォーメーションなどをX線結晶構造によって明らかにした。
1.平均分子量400のポリ(エチレンオキシド)をポリマーゲストとして、複合体の合成を検討した。ポリマーから直接再結晶を行う直接法、包接されない有機溶媒を媒介とする溶媒法および、他の有機低分子を包接させた結晶をポリマー溶液中に静置し、ゲスト交換によるインタカレーション法について検討を行った。コール酸は多くの有機小分子を包接することが知られているが、ポリエチレンオキシドからの再結晶ではゲストを含まない結晶のみが形成された。これに対し、ステロイド側鎖をアミドにしたコール酸アミドではポリ(エチレンオキシド)を内包した結晶が形成された。ホスト:ゲスト(高分子鎖のユニットに対して)は1:2であり、ホスト結晶中に二本の高分子鎖が導入できているものと考えられる。
さらに、生成したコール酸アミド-ポリ(エチレンオキシド)の複合体結晶の結晶構造をX線回折により同定した。ホストの格子はテトラヒドロフランやエタノールなどの低分子を包接した場合と同じ構造であり、一次元的なチャンネルを有するものであり、チャンネル空間に高分子鎖がのびていることを示している。
このように胆汁酸ステロイドとポリ(エチレンオキシド)の組合せで有機結晶-ポリマーハイブリッドを形成することおよびその結晶構造を明らかにすることができた。

研究成果

• [文献書誌] 佐田和己: "胆汁酸ステロイドおよび誘導体の包接化合物" 有機合成化学協会誌. 54. 113-121 (1996)
• [文献書誌] K.Nakano: "Reversible Layer Sliding in Cholic Acid Crystals." Molecular Crystals Liquid Crystals. 276. 129-132 (1996)
• [文献書誌] K.Sada: "Hydrogen Bond ″Triple Hooks″ in an Inclusion Crystal of Cholanamide with aniline." Molecular Crystals Liquid Crystals. 276. 121-127 (1996)
• [文献書誌] K.Nakano: "Novel Additive Effect on Polymorphs of Inclusion Crystals ; Cholic Acid Crystals Involving Different Hydrogen-Bonded Networks in Spite of the Same Organic Guest" Journal of the Chemical Society,Chemical Communications. 989-990 (1996)
• [文献書誌] P.Briozzo: "Structures of Three Inclusion Compounds of CHolanamide with Either (S) -Enantiomer,(R)-Enantiomer or an Optically Resolved Mixture of Butan-2-ol" Acta Crystallographica Section B.B52. 728-733 (1996)
• [文献書誌] K.Sada: "Chiral Discrimination of 1-Phenylethylamine by Diastereomeric Salt Formation with Bile Acids.Crystal Structures of Cholic Acid Salts with (R) -and (S) -1-Phenylethylamine" Chemistry Letters. 837-838 (1996)