研究者は太陽エネルギーを効率よく化学エネルギーに変換する人工光合成系を実現させるためには、遠距離光誘起電子移動反応およびそれに続くポテンシャルカスケードを利用し電荷分離状態を達成することが重要であると考え、以下の3点について研究を行った。 1、遠距離で光誘起電子移動反応やエネルギー移動を可能にするためには共役性の高いmolecular wireを用いる必要がある。そのため、ピロールとo-ベンズアルデヒドスルフォン酸ナトリウムの付加縮合反応について検討したところ、エネルギーバンドギャップが0.5eV以下のsmall-band-gap polymerの合成に成功した。 2、このsmall-band-gap polymerに発色団としてポルフィリンおよびピレンをアクセプターとしてアントラキノンをランダムに導入し、その分子内電子移動反応について蛍光消光実験により検討した。その結果、ピレン-アントラキノン系で遠距離分子内電子移動反応が起こっていることを示唆した。なおポルフィリン系ではアントラキノンの有無に関わらず蛍光がほぼ完全に消光されたことから励起エネルギーが高分子主鎖に移動したものと推察する。 1、2、の結果からsmall-band-gap polymerを用いることで遠距離光誘起電子移動反応が起こる可能性が見出された。そこで次の段階として 3、発色団とアクセプターの距離を一定にしポテンシャルカスケードを形成するためには、一次元的に構造規制された分子を作る必要がある。そこでペプチド合成における固相法を応用することを考え、現在検討を行っている。
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