研究概要 |
1 天然ゴムの混合脂肪酸と結合脂肪酸の解析 ハイアンモニア天然ゴムラテックスを12,000rpmで遠心分離してからクリーム層を凝固して固形ゴムを得た(HANR)。HANRの混合脂肪酸と結合脂肪酸はアセトン抽出とエステル交換により単離した。単離した脂肪酸エステルを液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定したところ、脂肪酸以外の成分が多数含まれていることが判明した。脂肪酸はODSシリカゲルを充填したカラムを用いて全て分離できた。 2 シスポリイソプレンの結晶化挙動と力学的性質への脂肪酸の影響 天然ゴムの結晶化は、アセトン抽出により遅くなりエステル交換により回復した。結晶化挙動に関係するガラス移転温度や平衡融点はこれらの処理により全く変化しなかった。このことから、ゴムの結晶化は結合脂肪酸と混合脂肪酸の存在に直接関係していることがわかった。そこで、合成シスポリイソプレンをモデルにした実験を行った。種々の脂肪酸を合成シスポリイソプレンとともにベンゼンに溶解して凍結乾燥法により混合物を作製した。これまでステアリン酸だけが経験的に核剤として用いられてきたが、飽和脂肪酸ではシスポリイソプレンとの混合物における脂肪酸の融点がシスポリイソプレンの結晶化温度よりやや高いときに最も優れた核剤効果を示すことがわかった。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合物1%を合成シスポリイソプレンに加えた混合物では、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比が1:3のとき最も優れた核剤効果を示すことが明らかになった。加硫した合成シスポリイソプレンの引っ張り試験では、結晶化挙動の結果に対応して、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の1:3混合物を添加したとき最も鋭い応力の立ち上がりを示すことがわかった。
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