研究概要 |
電気粘性効果(ER効果)とは、電場を印加すると流体の粘性が著しく増加する現象をいう。側鎖型液晶ポリシロキサン(C_3EACN)をジメチルシリコン溶媒(DMS)に分散させた系は、大きなER効果を示すことが分かっているが、その機構は良く理解されていない。 この系は互いに相溶しない非相溶ポリマーブレンドであり、相分離している。本研究では、電場の印加により相分離構造のモルフォロジーが変化することに着目し、この系でのER効果のメカニズムを解析した。 初めに、C_3EACNの構造と電気的特性をX-線回折,誘電率測定の実験によって調べた。その結果、ER効果を示す温度領域ではC_3EACNは液晶性は示さないこと、液晶基に起因するδ緩和が10KHz以上で存在すること、1kHz以下でイオン導電性を示すことが明らかになった。 次に、電場印加後のモルフォロジーの変化を顕微鏡観察によって調べた。この系では、溶媒の中にC_3EACNのドロプレットが島状に点在している。電場を印加すると、ドロプレットは電場方向に引き延ばされる。そこで、ドロプレットの変形率を印加電場の周波数依存性を画像処理によって定量的に測定した。80Hz以下ではドロプレットの変形が大きいが、周波数の増加に伴ってしだいに変形量は少なくなり、1kHzではほとんど変形しないことが分かった。このドロプレットの変形はMaxwellの応力に起因すると考え、C_3EACNの誘電率及び導電率の値を用いて変形率の周波数依存性を理論的に計算したところ、実験結果と良く一致した。 ドロプレットの変形と系全体の粘性の関連を調べるために、粘度計を用いてER効果の電場周波数依存性の測定を行った。ドロプレットの変形が緩和する周波数帯で、粘性変化も著しく減少していることが分かった。従って、この系でのER効果は、ドロプレットの変形に起因することが明らかになった。
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