フラクチャーの流体浸透率は、フラクチャーの表面粗さの影響をうけるものと考えられる。従って、フラクチャーを平行平板と仮定して流体浸透率を評価する3乗則に対し、その補正係数としてフラクタル次元とスティープネネスで記述できるフラクチャー表面形状のフラクタルモデルを用いた新たな粗度パラメータの導入を試みた。 まず、表面形状の異なるフラクチャーを用意し、シリコンゴムを用いてフラクチャー面の型取りを行い、その表面形状測定をおこなって各フラクチャー面に対するフラクタルモデルを定めた。次に岩石、マトリックス部の浸透の影響を除去するため、シリコンゴムの型を母型としてエポキシ系の樹脂を用いてフラクチャー面をもつ人工のコア試料を作成し、これに対して浸透率測定を実施した。浸透率測定は高精度の圧力調整バルブと圧力セルからなる定圧流体供給システムを作成して実施した。浸透率測定の結果、フラクチャーの流体浸透率はスティープネスが大きいものほど小さくなる傾向が見られたが、実験式を立てられる程の相関関係を得ることができなかった。これは、試料によりフラクチャーのかみ合わせ状態が異なり、純粋にフラクチャー面の表面粗さの違いだけを実験結果に反映させることができなかったためであると考えられる。一方、WalshとBraceが提唱した流体の流路を考慮した多孔質媒体内の流体浸透率を表す一般式から、3乗則のフラクチャー表面粗さに対する補正係数が、形状係数とト-チョスティーの2乗ならびにフラクチャー面の凹凸を考慮した面積とみかけの面積との比の2乗の積で表現できることがわかった。従って、フラクチャー表面形状に大きく依存すると考えられるト-チョスティーとフラクチャー面の面積比をフラクタルモデルで表現できれば、フラクタルモデルに基づく新たな粗度パラメータの導入が可能になるものと考えられる。
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