1.水稲出穂期に同化した炭水化物の穎花間の分配の差異がその後の頴花の生長に及ぼす影響 登熱特性の異なる水稲品種日本晴と密陽23号を供試し、開花後4、12および20日後に^<13>Cを同化させ、強勢および弱勢穎花間の^<13>C分配割合とその生長の関係を異なる光条件下で調査した。両品種とも出穂後、自然光区の穎花の生長速度は、弱勢穎花は強勢穎花より遅く、また遮光区では、自然光区よりも遅くなり、特に弱勢穎花で顕著であった。最終粒重も穎花生長速度は同様に、自然光区より遮光区が、強勢より弱勢穎花の方が小さくなる傾向を示した。自然光区において、開花4日後に同化した^<13>Cは、強勢穎花に最も多く分配されていたが、開花後の日数が経過するとともに、下位に穎花への分配が多くなり、開花20日後に同化した^<13>Cは弱勢穎花に最も多く分配されていた。遮光区においては、常に強勢穎花に最も多く分配されており、20日後には弱勢穎花の炭水化物受容能力はかなり低下していた。このことより、登熟初期の穎花への非構造性炭水化物の供給量が制限されると、その後の穎花の生長が抑制されることが示唆された。 2.穎花の内生ABA濃度が穎花の生長に及ぼす影響 日本晴と密陽23号を供試し、穎花の生長とABA濃度の関係を異なる光条件下で調査した。穎花の乾物増加速度は上記1と同様の傾向を示し、光が弱いほど、また弱勢穎花ほど遅くなった。穎花のABA濃度は出穂直後に上昇し始め、最大値に達した後、登熱の進行とともに減少した。強勢、弱勢あるいは遮光の有無に関わらず、最終粒重が小さい穎花ほど、ABA濃度の最大値が大きく、その出現時期が遅くなる傾向にあった。このことより、内生ABA濃度と登熟の良否は密接に関係していることが示唆された。
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