山岳地の野営行為が植生の損失と裸地の拡大に及ばす影響を明らかにするために、大雪山国立公園内のヒサゴ沼キャンプ場において、利用状況(テントの設置位置)、植生(被度、出現種)、土壌(硬度、含水比、仮比重、三相分布、孔隙率、有機物含有量)の調査を行った。 同じサイト内でもテントが常に設置される場所と、まれにテントが設置される場所、テントが設置されない場所があり、野営行為によるインパクトの量が異なることが推察された。 テント設置位置から利用量により調査区を3段階(なし、小、大)に分類し、比較を行った結果、インパクトの程度に違いがみられた。植生に関しては利用量の大きい調査区では、被度が小さく、出現種が少ないことが示された。土壌に関しては、利用量の大きい調査区では硬度(支持強度)は大きく、含水比は低く、仮比重(容積比重)が大きくなることが示された。さらに、利用量の小さい調査区においても利用量の大きい調査区と同程度に気相が減少していることが示された。孔隙率も利用量の大小にかかわらず、利用が行われている調査区では低く、僅かな利用でさえも土壌の固結は生じることが示された。 本研究の結果から、野営行為は僅かな利用でさえも土壌や植生に影響を及ぼしていることが明らかになり、柵の設置等により利用を集中させた方が現段階ではインパクトの軽減につながると予想された。今後の定期的に、利用による植生、土壌への影響についてモニタリングを行っていく必要があると考えられる。
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