研究概要 |
(1)アスパラガス実生の花成誘導法を確立するため、種子に対する効率的なカ-バメート化合物処理法について検討し、50mg・liter^1のpropyl (3,4-dichlorophenyl) carbamateに12日間浸漬すればよいことが分かった。また、このカ-バメート化合物処理による成苗あたりの開花株率には品種により大きな差(15〜72%)が見られた。 (2)8品種55個体の雄株を供試してやく培養を行った。やく培養によるカルス誘導率や再分化率には品種間および品種内の個体間で差が見られ、供試した雄株のうち現在までに6品種25個体から185個体の再分化植物体を獲得している。このうち73個体についてアイソザイム分析を行ったが、小胞子由来と思われる遺伝子型が純系ホモ化している個体は確認できなかった。アイソザイム分析を行っていない再分化個体や現在再分化中のカルスもあるため、今後順次アイソザイム分析を行い、純系ホモ化が確認された個体について染色体観察により倍数性の確認を行う予定である。 上記の通り、半数性を確認した小胞子由来植物体が得られていないため、小胞子由来不定胚に対するカ-バメート化合物処理法の検討は行っておらず、現在までに超雄株の早期選抜という当初の目的を達することができなかった。しかし、本研究により新たな知見が得られた。すなわち、カ-バメート処理によって開花した雄株の花粉には稔性があることが確認されたことにより、純系ホモ優良雌株個体を種子親としてカ-バメート化合物処理を適用しながら連続戻し交雑を行うことで、遺伝子に同質で採種のための交配親の系統維持が必要になる(雌雄混合の)系統を短期間のうちに育成できる可能性が示唆された。
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