植物は病原体由来の抵抗反応誘導物質(エリシター)を認識することにより、抵抗反応を発現すると考えられている。エリシターの認識は、エリシターに対する植物の受容体(レセプター)を介して行われると考えられる。シリンゴライドはPseudomonas syringaeから単離された非病原性遺伝子avrDの産物により生成され、抵抗性遺伝子Rpg4をもつダイズ品種に対してのみ抵抗反応を誘導する品種特異的エリシターである。本研究は品種・レースの特異性の分子機構を解明するため、シリンゴライドに対するダイズのレセプターの精製およびその遺伝子のクローニングを目指している。 平成7年度科学研究費補助金奨励研究(A)により行った研究において、[^<14>C]でラベルしたシリンゴライドと抵抗性ダイズ品種植物より調製した分画との結合実験の結果、シリンゴライドに特異的に結合する蛋白性の部位が、ダイズの可溶性画分に存在することが示唆された。本年度はシリンゴライド結合部位が抵抗性遺伝子Rpg4に依存しているかどうかを、抵抗性(Rpg4/Rpg4)あるいは罹病性(rpg4/rpg4)のダイズより調製した可溶性画分と[^<14>C]シリンゴライドとの結合実験により調べた。その結果、シリンゴライド結合部位はどちらの可溶性画分にも存在し、シリンゴライドの結合と抵抗性遺伝子の有無には関連がなかった。すなわち、Rpg4の産物はシリンゴライドのレセプターそのものではなく、エリシター・レセプター結合後のシグナル伝達に関与していると考えられる。これまで遺伝子対遺伝子説により抵抗性遺伝子がエリシターに対するレセプターをコードすると考えられてきたが、今回の結果からこれまでのモデルを再考する必要があると考えられる。今後、シリンゴライド結合蛋白を精製するとともにその遺伝子のクローニングを行いたい。
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