ナス科植物の誘導性抗菌物質カプシジオールは、種々の酵素によって生合成される。本研究では、先にHoshinoらとの共同研究で、アラキドン酸処理によりピ-マン中にカプシジオールの生合成が誘導されることと、ピ-マンに特異的に誘導される蛋白質があることを明らかにしている。そこで、ピ-マンにアラキドン酸を処理し、このピ-マンからmRNAを精製し、このmRNAをもとにcDNAライブラリーを作製した。次にこのピ-マンから、分子量59kDaの蛋白質を精製し、プロテアーゼで消化後、SDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写した後、各バンドのアミノ酸配列を決定した。次に得られたアミノ酸配列から、PCR用プライマーを合成した。このプライマーを用いてRT-PCRを行なった結果、この遺伝子の一部をコードするcDNAを得た。このcDNA部分配列をcDNAライブラリーのスクリーニング用のDNAをプローブをとした。次に、DNAプローブを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果、分子量56439を持つ蛋白質をコードするcDNAが得られた。このアミノ酸配列は、植物のカタラーゼと約90%以上の相同性を示し、この酵素がカタラーゼをコードすることが判った。この遺伝子をプローブとして、ノザンブロッティングを行なった結果、アラキドン酸存在下でこの遺伝子が特異的に誘導されていることが明らかとなった。エリシターで誘導されるカタラーゼがクローン化されたのは、この実験が初めてである。
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