ピナツボ火山灰を供試して湛水培養実験を行い、セルロースおよびイナワラ添加による酸の生成および微量要素の可給化を測定した。酸物質については、有機物添加により酢酸を主とする脂肪酸や炭酸が生成が明らかであった。可給態の微量要素は、抽出剤として0.1M HC1を用い常法により測定を行った。その結果、銅および亜鉛について有機物処理による有意な増加は見られなかった。 ピナツボ火山灰に、セルロースおよびイナワラを添加して水稲の栽培試験をポットで行った。水稲の品種はササニシキを用いた。一度目の栽培は、有機物を添加しない対照区は正常に生育したが有機物添加区は還元障害により極度の生育不良が発生し、有機物添加直後は作物の生育には適さないことがわかった。二度目の栽培は一度目の栽培の跡地土壌で行い、どの区も還元障害がなく正常に生育したが、乾物重に有意差はなかった。また、銅や亜鉛の欠乏症状は見られず正常な生育を示した。水稲による銅および亜鉛の吸収は、処理による有意な差は見られなかった。なお、跡地土壌の可水稲の給態の微量要素を培養実験と同様に測定したところ、亜鉛については栽培前で1.6ppmだったものが栽培により平均で2.0ppmまで増加した。しかし、有機物添加による増加は見られなかった。銅については栽培前で8ppmであったが、栽培の前後で有意な変化はみられなかった。 以前の実験と合わせて考えると、ピナツボ火山灰への有機物添加は可給態のカリウムやマグネシウムを増加させる効果があるが、可給態の銅や亜鉛の増加させる効果は殆ど望めないことが明らかとなった。
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