本研究はアルミニウム集積植物の耐性機構の解明を目的とし、特に体内に集積するアルミニウムの存在形態に着目して、アルミニウム結合物質の同定等を行った。実験材料は典型的なアルミニウム集積植物ハイドランジアを用いた。主な成果は以下の通りである。 1.ハイドランジアの葉中に1kg新鮮重あたり15.7mmolのAlが含まれているが、その3分の2は細胞溶液中に存在していた。 2.^<27>Al-NMRを用いて、葉中や細胞溶液中のAlの存在形態を観察したところ、いずれもケミカルシフトが11から12ppm付近にシグナルが認められた。このケミカルシフトはクエン酸-Al(1:1)錯体のものと一致する。 3.細胞溶液中のアルミニウムをSephadex G-10を用いて、繰り返し精製した結果、クエン酸とAlが1:1の比で存在している画分が得られた。この画分も^<27>Al-NMRにおいて、葉中のと同じシグナルを与えた。 4.Alとの結合物質の構造をさらに確認するために、イオン交換、イオン排除クロマトグラフィを用いて精製した。^1H-NMRやFAB-Mass等で測定した結果、クエン酸の構造と全く一致していることが明らかとなった。 5.細胞溶液中のAlの毒性をテストするために、トウモロコシの根の伸長阻害に対する影響を調べた。その結果、細胞溶液から精製したAlは全く根の伸長を阻害しなかった。また根端の細胞の生存率にも影響しなかった。 これらの結果はアルミニウム集積植物ハイドランジア葉中において、Alが体内でクエン酸と安定な錯体を作ることによって、アルミニウムを無毒化していることを示している。
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