実際に作土硬化現象の生じている水田から土壌試料を採取することが困難であったため、福井県農業試験場の協力を得て、場内の連作水田から落水後、乾燥前の土壌を採取し、輪換田に模するために人為的に乾湿サイクルに供した。室温で乾燥後、再び水田での圃場容水量相当以上の水分含量にする際、単に土壌を湛水する系と、加える水に還元剤を渡河して強制的に還元する系を設定した。さらにこのサイクルを2回繰り返す系を設定し、水田から採取後無処理の系と合わせて、合計5系列で以下の実験を行った。 一般理化学性測定の結果、本試料はハロイサイトを主要粘土鉱物とし、有機炭素含量約3%の細粒質灰色低土地であった。懸濁液中の微細粒子の乾燥質量と分光光度計で測定した濁度との間には直線関係が認められ、懸濁液の濁度を測定することで土壌の物理性に関する一指標である分散性を追跡できると考えられた。還元状態が進と二価鉄の溶脱が認められ、イオン吸着法によって判断される変異荷電画分が鉄の溶脱量に応じて減少し、荷電ゼロ点(ZPC)の低下が見られた。同時に代かきを想定した攪拌によって懸濁状態にした土壌の微細粒子の分散性は増加した。再度風乾した土壌では微細粒子の分散性は再び低下した。乾湿のサイクルによって主として鉄の溶脱に伴う土壌粒子の界面変化は明らかに認められたが、クラスト硬度計により測定された硬度には系列間に有意な差異は認められなかった。
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