これまでの実験ではストレスの原因となる、異種タンパク質のペリプラズムへの分泌生産の誘導は、アルカリ性ホスファターゼのプロモーターを利用して行っていた。これにはリン酸を含む培地から欠乏する培地への培地交換を必要とする。そこでより簡便に融合遺伝子の発現を誘導するため、強力でしかもIPTGによる制御が可能なtacプロモーターの下流に当該融合遺伝子を導入した。tacプロモーターから遺伝子発現を誘導したところこれまでのペリプラズムプロテアーゼDegPを欠損する大腸菌を宿主に用いた場合だけでなくdegP^+株を宿主とし場合にもPreS2のペリプラズムへの蓄積が認められた。この際これまでの3種類のタンパク質に加え48kDaのタンパク質が誘導合成を認めた。分子量およびDegP欠損株では誘導されないことからこの48kDaタンパク質はDegPであると予想された。そこでストレス下の大腸菌からmRNAを調製しノザン解析によりdegPmRNA量を調べたところその転写量は非ストレス下の大腸菌のものと比較し5倍から7倍に上昇していた。Prinston大のSilhavyらは、大腸菌外膜リポタンパク質NlpEの過剰生産によりDegPの発現が誘導されることを示している。そこでこの現象との比較を行うためにnlpEをtacプロモーターの下流にクローン化し、パルスチェイス実験をおこなったところNlpEそのものに加え既に報告のあるDegP(48kDa)とまだ未報告の37Kdaのタンパク質の発現量が顕著に上昇した。私の現象とDegP以外は異なるタンパク質が誘導されてくることから両者は異なる現象であると予想される。以上の経緯のように交付申請書作製時の34kDaタンパク質にかえ48kDaタンパク質の解析を行う結果となった。その結果、異種タンパク質のペリプラズム生産に伴いペリプラズムプロテアーゼDegPが誘導合成されることおよびこの誘導は転写レベルで行われることを明らかにした。
|