骨吸収は最終分化した破骨細胞が骨吸収促進因子の刺激を受け、骨との間に構築する骨吸収空間に炭酸脱水素酵素の作用により生産促進されたH^+をプロトンポンプを介して分泌し、骨の無機成分の分解や酸性条件で活性化されたシステインプロテアーゼによる骨コラーゲン繊維の分解を行うことによりなされると考えられている。システインプロチアーゼであるカテプシンLの特異的な阻害剤がピット形成実験系においてピット形成を抑制し、骨粗鬆症のモデル実験系において卵巣摘出による骨量減少を抑制した。この結果は骨吸収におけるコラーゲンの分解酵素の一つが、破骨細胞の分泌するカテプシンLであることを明らかにしさらに、カテプシンL特異的な阻害剤が骨吸収抑制剤として骨粗鬆症治療に応用され得ることを示唆するものである。さらに液胞型プロトンATPaseを特異的に阻害するコンカナマイシンBが破骨細胞による骨吸収面の酸性化を抑制し、副甲状腺ホルモン刺激による骨片上のピット形成を抑制した。またコンカナマイシンBは骨の器官培養系でのカルシウム放出を抑制することを確認した。細胞内オルガネラの酸性化をコンカナマイシンBと異なる機構(プロトン輸送阻害)で阻害する化合物prodigiosin25-C及びmetacycloprodigiosinも副甲状腺ホルモン刺激による骨吸収を濃度依存的に抑制した。さらにmetacycloprodigiosinは破骨細胞のオルガネラの酸性化を阻害した。破骨細胞によって酸性化された骨吸収面は細胞外リソソームとして機能すると考えられているが、これらの結果は骨吸収面の酸性化が骨基質分解に必須であることを示し、骨吸収空間の酸性化を特異的に阻害する化合物が骨吸収抑制剤として応用可能であることを示唆するものである。
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