本申請者は石油中の有機硫黄化合物のモデルとして考えられているジベンゾチオフェン(DBT)を脱硫し、2-ヒドロキシビフェニルを生成する細菌R.erythropolis D-1が生産するDBT脱硫酵素系について研究を行っている。本年度は、DBT脱硫の第一、第二段階であるDBTからDBTスルホンおよびDBTスルホンから2'-ヒドロキシビフェニル2-スルフィン酸への転換を触媒する酵素について精製を行い、その性質を明らかにした。 R.erythropolis D-1を唯一の硫黄源としてDBTを含む完全合成培地で培養し、これを超音波破砕し無細胞抽出液を得た.硫安分画(30-60%)後、DEAE-Sepharoseクロマトグラフィーに通すと両活性ともシングルフラクションでは見いだせなくなり、両活性とも2つの画分の存在下で初めて活性を検出できた。それぞれの一方の画分は共通しており、NADHにリンクし、人工電子受容体、dichlorophenolindophenolやcytochrome c、ferricyanideを基質とするreductase活性を有していた。DBT分解活性を有する画分を精製したところ、分子量270kDa、サブユニット分子量は45kDaの電気泳動的に均一な精製酵素標品が得られた。また、DBTスルホン分解活性を有する画分を精製したところ、分子量88kDa、サブユニット分子量50kDaのほぼ均一な精製酵素標品が得られた.両酵素とも金属キレーター、SH阻害剤によって阻害された。DBT分解酵素系はDBT骨格を有する化合物には作用したが、カルバゾール、フルオレンなどには働かなかった。
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