スレオニンアルドラーゼは、グリシンとアルデヒドからβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸を生成する反応、及びその逆反応を触媒する。β-ヒドロキシ-α-アミノ酸は、医薬品原料として有用であり、現在化学合成法により生産されている。しかし本方法では、立体特異性を制御できず、工業的製造の上での障害となっている。かかる背景下、スレオニンアルドラーゼを用いて、安価に供給されるグリシンとアルデヒドから、光学的に純粋なL-スレオ、L-エリスロ、D-スレオ、D-エリスローβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸類を合成する方法の開発が望まれている。本研究では、この新規な合成方法の開発の一環として、Aeromonas jandaeiにより生産されるL-アロースレオニンアルドラーゼ遺伝子の取得・解析を行った.精製酵素のN-末端アミノ酸配列に基づいてプライマーを作成し、PCRにより約110bpの本酵素部分遺伝子の増幅を行った。本断片をプローブに用いてA.jandaei染色体DNAライブラリーとのコロニーハイブリダイゼーションを行い、L-アロースレオニンアルドラーゼ活性を有するクローンを単離した。一次構造解析の結果、本酵素は既知のPLP酵素との相同性は認められなかったが、Saccharomyces cerevisiae由来の機能未知のGLY1蛋白質及びCaenorhabditis elegans由来のGLY1-Like蛋白質とそれぞれ40%と41%の相同性を示した。本酵素においてPLP結合部位と推定された3つのリジン残基を各々アラニンに改変した結果、K199A改変酵素は420nmの吸収ピークを消失し、触媒活性も完全に失った。従って、K199基は本酵素の触媒反応においてPLPとシッフ塩基を形成して、アルドール反応を触媒すると推定された。
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