1、植物ホルモン様の活性を有するエピジャスモン酸メチルは、側鎖付け根の立体配置が反転して、活性の小さいジャスモン酸メチルに異性化しやすい。側鎖の配置および両側鎖の立体的関係を固定するために、シクロペンタノン環部分にフッ素原子や二重結合を導入したアナログを合成した。 (1)、プラント規模で生産されているジャスモン酸メチルを出発原料として、位置選択的に二重結合を導入して4、5-ジデヒドロジャスモン酸メチルを得た。これを熱異性化して3、7-ジデヒドロジャスモン酸メチルに変換した。3、7-ジデヒドロ体は、レタス種子の発芽をジャスモン酸メチルより強く阻害したが、イネ第二葉鞘伸長阻害、ハツカダイコン種子発芽阻害活性は弱かった。レタスにおいては両側鎖同士の立体的関係が重要であることが示唆された。他においてはシクロペンタン環と側鎖の角度および側鎖付け根の静電的性質も重要であることが示唆された。 (2)、ジャスモン酸メチルからエノールアセタートを経て7-フルオロジャスモン酸メチルの相対立体異性体を2種類合成したが、いずれも植物生長阻害活性をほとんど示さなかった。植物体の活性部位は、静電的な受けやすいことが示唆された。 (3)、3、7-ジデヒドロ体の側鎖二重結合を選択的に水素添加により還元した化合物を、フッ素ガスで処理して3、7-ジフルオロ-9、10-ジヒドロジャスモン酸メチルを得た。生理活性は現在試験中である。 (4)、(3)においてジフルオロ体が得られたので、今後は9、10位二重結合を保護しての、ジフルオロ化、シクロプロパン化反応を行う。 2、上記(1)のように4、5-ジデヒドロ体をジャスモン酸メチルから合成した。このものはジャスモン酸メチルとほぼ同等の植物(イネ第二葉鞘伸長、レタス、ハツカダイコン種子発芽)生長阻害活性を示した。この部位に二重結合を導入しても活性に変化がないことから、共役付加反応や[2+2]環化反応を用いて活性を保持した様々なアナログ、プローブ合成の可能性が示唆された。
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