連鎖球菌の細胞表面に存在する蛋白質、プロテインGは、宿主体内におけるイムノグロブリンG(IgG)と強く結合する56アミノ酸残基よりなる小さなドメインを持つ。最近、このジスルフィド結合を含まないドメインが水溶液中において、α-ヘリックス構造とβ-シート構造を含むコンパクトかつ特徴的な立体構造を有すること、その構造は熱や酸などに対し非常に高い安定性を示すことなど興味深い事実が相次いで明らかにされた。本年度における研究ではプロテインGB1ドメイン内に局在する立体構造形成能とフォールディング核形成能との関係をフラグメント自身の構造を解析することにより明らかにする研究を行なった。すなわち、本研究の代表者によってすでに明らかにされている強いフォールディング核形成能を持つC末端16残基(C16)に対し、アミノ酸置換アナローグを数種合成し、天然型フラグメントとの熱力学的安定性について核磁気共鳴法による解析を行なった。その結果、C16の立体構造形成能には疎水的相互作用、静電相互作用、水素結合が関与しており、ほぼ全体に及ぶアミノ酸残基がC16構造形成に関与していること、および球状蛋白質に見られるように高度な協同性を示す立体構造形成能を持っていることが明かとなった。 さらにC16アナローグを含むフラグメント同志の混合物を核磁気共鳴法により解析し、ドメインの立体構造形成過程について考察した。結果として、形成されたフラグメント相補複合体の熱力学的安定性はC16フラグメントの安定性と強い関連を示す結果が得られた。
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