骨形成は、骨基質成分(ハイドロキシアパタイト)を合成する骨芽細胞と、これを分解する破骨細胞との間の、巧妙なリモデリングによって行われている。本研究では、この骨形成を促進する物質を、食品中に検索する事を目的として行われた。まず、骨基質合成を促進する骨芽細胞について、そのモデルとなりうる細胞株の検討を行った。その結果、マウス由来の骨芽細胞株MC3T3-E1が最もこれに適していること、すなわち既知の有効成分(ビタミンD、骨形成因子BMP)の添加によって、実際の生体内での骨芽細胞の遺伝子発現パターンを再現でき、また長期培養によって骨基質形成することも確認した。 骨形成への有効成分の評価は、このような骨芽細胞に試料を添加したのちに、骨基質成分の合成量を直接測定することがこれまで行われていた手法であった。しかし骨基質成分を直接測定することは煩雑で、しかも細胞株に添加後、長期培養が必要となる。本研究の過程で、骨芽細胞中のアルカリホスファターゼ活性の上昇が、骨基質成分の形成に直接関与することを、遺伝子工学的手法(アンチセンス阻害法)を用いて明らかにした。これにより、食品中の新規な有効成分の検索に当たって、骨基質成分の合成の評価には、アルカリホスファターゼの活性上昇を検討することによって、より迅速で確実な評価が行えることが判明した。現在この評価法をもとに、動物、植物由来の食品(蛋白質)を中心に検索を行っている段階である。
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