1.中鎖脂肪酸グリセリド分解物が与える腸管吸収促進の経路の特定 メンブレンフィルター上に培養したヒト結腸癌由来のCaco-2を用いて、中鎖脂肪酸グリセリド分解物が与える腸管吸収促進の経路について以下の結果を得た。腸管側に促進物質を加えると、細胞間隙を通過する経路のマーカーとして用いた親水性薬物・ペニシリンVの透過が促進された。また細胞間隙経路の指標である細胞層を隔てた電気抵抗が低下し、促進される経路が細胞間隙であることが示された。さらに、透過経路のモデルをたて、細胞のミトコンンドリアでのデヒドロゲナーゼ活性を指標とした実験(MTT法)で得られた細胞の障害率とその時の透過係数の値から、細胞間隙を透過するモデルが障害率と透過係数の関係をよく説明することを明らかにした。なお、このモデルを96年9月の化学工学会シンポジウムにおいて発表した(Shima M.et a1.)。 2.細胞内シグナル伝達系阻害剤を用いたC10脂肪酸の作用機構の解明 細胞内情報伝達経賂の内phospholipase Cを介する経路の様々な段階での阻害剤を用いてC10脂肪酸の作用機構への細胞情報伝達系の関与について研究をした。diacylglycerolのアナログがC10の促進効果を阻害し、inositol trisphosphateが関与する経路の阻害剤のいくつかがC10の促進効果を阻害した。C10はこれらの経路に相反する様式で影響して、吸収促進効果を与えることが示唆された。これらの結果は、97年1月の日本薬学会関東支部シンポジウムで発表し、Proc.Int.Symp.Control.Release Bioact.Mater.にも発表した.
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