アルギニン(Arg)の代謝を介して産生される一酸化窒素(NO)は、感染や炎症時の生体防御能において重要な役割を担っている。本研究では、炎症モデルにおけるNO産生に及ぼす食餌Argと加齢の影響について検討を行った。3ヵ月齢及び20-24ヵ月齢の雄性C57BL/6マウスを20%カゼイン食対照群と3%Arg添加食群に分けて4週間飼育した後、リポポリサッカライド(LPS)25μgを腹腔内投与した。投与後、経時的に血中のNO産生量を測定するとともに、肝臓よりmRNAを抽出し、NO合成酵素(iNOS)の発現レベルをノーザンブロッティング法により検討した。その結果、血中のNOレベルは、両食餌群ともにLPS投与3-6時間後から上昇して12時間でピークに達し、その後急激に低下して24時間後には正常レベルとなった。Arg添加食群ではNOレベルの上昇が対照群に比べて早い傾向にあったが、12時間後の産生量においては有意な差が認められなかった。肝臓におけるiNOSは、血中NOレベルの上昇に先立ち、LPS投与3時間後に両群ともに発現が認められたが、群間に有意な差は認められなかった。炎症時にはiNOSの基質であるArgの消費が高まるが、この結果から本研究のLPS投与条件では、対照群においてもNO産生による消費に見合ったArgが供給されている可能性が考えられる。加齢群においては、LPS投与12時間後の血中NOレベルは若齢に比べて低い傾向が認められた。さらに、加齢群では若齢群とは異なり、投与12時間以降のNOレベルの低下が緩慢であり、24時間後においても正常状態より高いレベルが持続した。肝臓以外の組織及び加齢群のiNOSとサイトカインの発現レベルについては、現在検討中である。
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