1.北海道の沙流川の支流小流域(面積0.16km^2、地質は新第三紀礫岩)を調査地として、空中写真判読によって過去30年間の崩壊発生域と面積、また降下テフラTa-b(320年前噴出)とTa-c(3000yBP噴出)の斜面での消失域と斜面微地形の調査から過去320年間および過去3000年間の崩壊発生域と面積を、それぞれ調べた。 2.調査流域の全斜面において明瞭な遷急線(平均傾斜は上部斜面-32°、下部斜面-44°)が存在した。過去30年間の崩壊は全て遷急線下部斜面で発生し、30年間の平均で崩壊発生面積2400m^2/km^2/yr、崩壊土砂量1200m^3/km^2/yrであった。また、過去320年間の崩壊も全て遷急線下部斜面で発生しており、320年間の平均で崩壊発生面積1900m^2/km^2/yr、崩壊土砂量1000m^3/km^2/yrであった。この30年間と320年間との崩壊速度の良好な一致から、崩壊速度は過去320年間で変化していないことが判明した。 3.遷急線上部斜面と下部斜面でのテフラ分布様式、Ta-d(8000yBP)の分布域に位置する既往調査地の結果、さらに沙流川の下刻開始年代から、遷急線上部斜面では過去8000年以上崩壊が発生しておらず、下部斜面では8000年前以降崩壊が反復してきたことがわかった。320年間の崩壊速度に基づき、遷急線下部斜面における同一部位での崩壊再現期間は365年、8000年間での崩壊反復回数は22回と計算され、さらにこの反復回数は下部斜面の8000年間の削剥深から検証された。以上と2の結果とあわせると、過去8000年間の崩壊速度は現在(過去30年)の速度と同等であり、斜面崩壊が長期間にわたって定常的に発生していることが判明した。 4.既往調査地(白亜紀泥岩)では崩壊再現期間641年、反復回数12回であり、地質と調和的な崩壊頻度の相違が認められたが、8000年間の平均崩壊速度は両調査地ともに約1000m^3/km^2/yrで同等だった。
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