本研究では、スギ人工林と、コナラを主体とする落葉広葉樹二次林において、土壌表面から放出されるCO_2量を季節的に測定し、根の呼吸によるCO_2放出と土壌有機物の分解によるCO_2放出量を分離し、推定した。調査地は、農学部附属滝沢演習林第7林班内の林齢59年のスギ人工林(以下スギ林)とコナラを主体とする落葉広葉樹二次林(以下コナラ林)に設定した。土壌表面から放出されるCO_2量は、アルカリ吸収法により1996年6月中旬から11月中旬にかけて、ほぼ1ヶ月おきに計7回づつおこなった。両林分においてリターフォール量の測定もあわせておこなった。また測定終了後、各測定点下20cm内の土壌中に存在する根の現存量を実測した。土壌表面から放出されるCO_2量は、温度と指数関数でよく近似され、近似式と1996年の日平均気温から推定されるCO_2放出量の全量は、スギ林で63.07molCO_2・m^<-2>・yr^<-1>、コナラ林82.58molCO_2・m^<-2>・yr^<-1>となった。また、各点における根の表面積(S)、土壌表面から放出されるCO_2量(R_<total>)、単位表面積あたりの根の呼吸(R_<root>)、土壌有機物の分解によるCO_2放出量(R_<soil>)とした場合、R_<total>=S・R_<root>+R_<soil>という式が成り立つと仮定し、各測定日における実測値をあてはめた結果、推定したR_<soil>の値は、やはり気温と指数関係でよく近似した。その結果、年間の土壌有機物の分解によるCO_2放出量は、前述の全CO_2放出量のうち、スギ林で42.76molCO_2・m^<-2>・yr^<-1>、コナラ林で45.60molCO_2・m^<-2>・yr^<-1>と推定された。この値を乾物量に換算すると、それぞれ8.821ton・ha^<-1>・yr^<-1>、9.407ton・ha^<-1>・yr^<-1>となる。一方、リターフォール量は、スギ林で3.727ton・ha^<-1>・yr^<-1>、コナラ林で5.556ton・ha^<-1>・yr^<-1>であり、両者の比は、スギ林で0.42、コナラ林で0.59という値をえた。
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