研究概要 |
本研究では,山地渓流の生物多様性をに与える落葉枝堆積部の機能を明らかにすることを目的として,(1)落葉枝堆積部に形成される無脊椎動物群集の季節変化を追跡するとともに,(2)渓畔林組成の異なる様々な地点において、落葉枝堆積部群集の構造を比較し、渓畔林の種組成が無脊椎動物群集の多様性に与える影響を評価した。 落葉枝堆積部には,各季節とも落葉枝を直接摂食するシュレッダ-のみならず,落葉枝が分解して生成された微細有機物粒子を摂食するコレクター,これらの動物をさらに摂食するプレデタ-が存在した。種多様性は冬から早春にもっとも高かったが,夏にも多くの分類群による利用がみられた。また,群集構造は堆積部に形成される場所の水理条件や堆積の圧縮度によって大きく異なり,淵やよどみにゆるやかに堆積した落葉中の群集は種多様性が高く,バイオマスも大きかったが,水流のサ-キュレーションが悪い圧縮された堆積を利用できる種は限られたものであった。したがって,落葉枝堆積の分布を規定する河床構造は無脊椎動物群集の多様性に影響するものといえる。 種組成が異なる渓畔林間での比較によると,スギ人工林内を流れる渓流では落葉枝堆積に形成される群集の種多様性が低い傾向が見られたが,河川規模や地質,河床構造の影響は渓畔林種組成の影響を上回るものと判断された。渓畔林の落葉枝供給の機能を評価する際には,流量の変動様式やその場所固有の地形学的因子を考慮することが必要である。
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