まず、実験用に建設された在来木造軸組構法による2階建て住宅の偏心率を数段階に変化させた場合の強制・自由振動実験をおこない、各段階における振動特性を実験的に解明した。その結果、偏心率の上昇とともに、固有振動数は低下し、減衰定数はほぼ上昇傾向にあることが明らかになった。また耐力壁量が多い北壁線は変形が小さく、少ない南壁線の変形は大きくなり、その差は偏心率の上昇とともに大きくなることが判明した。耐力壁の偏在をできり限り排除しても南北壁線の完全な並進モードは得られなかった。偏心率が小さいときには最大振幅を与える基本振動のモードは並進に近いが、偏心率が大きい場合は振動モードは捻れ振動となった。以上のことは新規性、有用性があると判断されたので日本建築学会関東支部研究報告会にて公表した。 また、その実験用住宅について耐力壁の施工仕様(筋違い、外壁サイディング、内装石膏ボード)、水平構面の剛性、非耐力壁の剛性を変化させ、それが振動性状に与える影響を実験的に調べた。その結果、屋根瓦を施工した場合を除いて各ステージの構造要素の増加と供に、建物の基本振動数は上昇した。耐力壁が偏在する軸組に外壁サイディングのみを施工しても変形の偏りは是正されず、むしろ大きくなる。外壁サイディングのみを施工するよりも石膏ボードまで施工した方が耐力要素の偏りは緩和されるようであった。以上の結果は新規性、有用性に富むと判断されたので、第46回日本木材学会大会において発表した。 さらに、実験用住宅に静的水平荷重を与え、耐力壁の偏在が変形挙動、部材、接合部に作用する応力に与える影響について調べた。その結果、各壁線変形量の差異は偏心率の大小に巨視的には依在するが、その詳細は偏心率だけでは評価し得ない。2階小屋梁載荷時に下屋部分はその直近内側の壁線に追従して変形するが、2階床梁載荷時には追従しないことが判った。水平構面の有無は変形量分布の均等化に寄与するが、床面材料の複層化の寄与は小さく、根太施工法からの抜本的な高剛性化が望まれることを結論づけた。以上は新規性、有用性が高いと判断されたので、日本建築学会大会で発表し、日本建築学会関東支部研究報告集に投稿した。 また、耐力壁の偏在の多少が建物(模型)の破壊挙動に与える影響について実験的に解明した。その結果、耐力壁の偏在は破壊荷重を小さくすることが明らかになった。この結果は新規性が著しく高いと判断されたので、第46回日本木材学会大会において発表した。
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