研究概要 |
リグニンの微生物分解が本当にいままで知られている3つの酵素によって進行しているかどうかという疑問から、もう一度腐朽過程でのリグニンの分解機構を見直す必要があると考えこの実験を計画した。 まず、種々の培養条件によって、放射性同位体^<14>Cで標識した脱水素重合(DHP)リグニンを代謝させ最適培養条件を検討した。しかしながら、木粉培地に匹敵するDHP分解能を有する培養条件は見つけることができなかった。現在継続して、条件を検討中である。 さらに、^<13>C-NMRで特定の位置の化学環境に関する情報を得る目的で、リグニンモデル化合物の側鎖α位およびβ位炭素原子を安定同位体^<13>Cで標識したポリエチレングリコール(PEG)結合リグニンモデルポリマーの合成を計画した。この化合物は、申請者がはじめて合成したモデル化合物で、その有用性は証明済みである。共同研究しているアメリカ合衆国のグループから、β位芳香環に置換したアルコキシル基の数が分解に影響を及ぼすとの報告があったため、リグニンモデル化合物のβ位には、当初予定していたグアヤコールだけでなく、p-ヒドロキシフェノール、3,5-ジメトキシフェノールを持つ化合物を合成した。すなわち、合計六種類の化合物(p-ヒドロキシフェニルタイプ、グアヤシルタイプ、シリンギルタイプのα-^<13>C標識体とβ-^<13>C標識体)の合成に成功したことになる。また、通常のβ-O-4型モデル化合物の合成を改良し、短時間・高収率で合成する方法を確立した。上記で継続して検討中である培養条件が見つかり次第、この化合物のマイタケによるPEG結合リグニンモデルポリマーの挙動を検討する予定である。
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