本研究では、木材の非破壊計測用のプローブとして、近赤外レーザ光を実際面で活用できるようにするために、水の吸収波長(970nm)に近接した980nmおよび水の吸収とは直接関係しない830nmの発信波長をもつ高出力近赤外レーザ光コリメータユニットを構成し、材内のさまざまな情報を定量的に把握して、この方式の基礎資料を充足した。得られた結果を列挙する。 1.繊維飽和点以下で調湿されたいろいろな厚さの試料を対象として上記の実験を行った。その結果、水が木部実質に吸着すると細胞内こう表面での光の反射・散乱が抑制される事実が確認された。この現象と水に対する光の吸収特性を考慮することにより、試料厚さおよび照射波長によって特徴的に変動する透過光出力の動向をはじめて正しく理解することができる。 2.上記2波長(830nm、および980nm)の透過光出力実測値を説明変量として重回帰分析を行った結果、いずれの試料厚さにおいても予測精度の高い含水率検量線を作成することができた。 3.飽水状態の試料を室内に自然放置し、所定の時間間隔で透過光出力を測定した。細胞内こう部に自由水が存在すると、照射波長の水に対する吸収特性に関係なく、細胞内こう表面での光の反射・散乱が極端に抑制されることを見いだした。 4.透過光の検出位置をいろいろ変更して計測した結果、近赤外レーザ光は細胞内こうの長軸方向に伝播する傾向が強いことを確認した。 5.割れおよびヤニすじをもつモデル試料を測定し、これを検出できる条件について検討した。
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