本研究では、CPS成型体の熱的性質における異方性発現機構を検討し、あわせてCPS成型体のプレス面平行方向に選択的に熱を逃す最適条件を調べた。 1.実験方法 スギ間伐材の木炭を粉砕した後、高温焼成炉内で400℃以上の還元性雰囲気下で焼成した。篩別した焼成粉末に、フェノールホルムアルデヒド樹脂を添加した。ホットプレスを用いてCPS試料を所定形状に加熱成形した。得られたCPS成型体のプレス面平行方向と垂直方向の熱定数を測定した。 2.結果と考察 CPS試験体のプレス面平行方向の熱拡散係数は垂直方向よりも大きく、熱的性質の明確な異方性が認められた。CPSの木炭とフェノールが複合された顆粒体は、ホットプレスによる成型過程で押しつぶされ、層状に積層した構造をとる。この結果CPSの熱的性質に異方性が現れると推定される。木炭の粒度の増加にともない、CPSの熱拡散係数が増加する傾向がみられた。CPS成型体中での熱伝導は、木材本来の多孔性を維持しながら木材のように水蒸気の移動を伴わない熱伝導が生じると考えられる。またCPS成型体のプレス面平行方向の熱拡散係数は、比重の増加とともに低下する傾向があった。さらに木炭の粒度、比重を種々に変化させて得られたCPS成型体の微細構造を電子顕微鏡を用いて解析をおこない、CPS成型体の熱的性質における異方性発現機構を明らかにした。 3.今後の研究計画 今回得られた成果をもとにCPSを積層した木質材料を製造して、燃焼試験および火炎下におけるクリープ試験を行い、耐火複合材料としての最適製造条件を求める予定である。
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