本年度に得られた成果は以下の通りである。 I.ウニ・アワビ消化管由来アルギン酸分解菌の種構成と分解特異性 エゾバフンウニ消化管から分離したアルギン酸分解菌はその一般性状からVibrio属と同定されたものが大半を占めていたが、代表株についてDNA-DNA相同性を測定した結果、少なくとも2菌種以上が混在していることが明らかとなった。一方、エゾアワビ消化管から分離したアルギン酸分解菌は非運動性のVibrio属類似細菌が主体をなしていた。これらの菌群は16SrDNA塩基配列による分子系統解析およびアルギン酸分解性Vibrio属標準株とのDNA-DNA相同性を測定した結果、Vivrio属の新種であることが明らかとなった。また、ウニ消化管由来アルギン酸分解菌のアルギン酸分解特異性はアルギン酸を構成するpolyMおよびpolyGいずれのホモポリマーとも分解する菌株が30%以上を占めているのに対し、アワビ分離株ではpolyGブロックに対する分解性の強い菌株が30-70%占めていた。ウニ自体はアルギン酸分解酵素を分泌しないことから、消化管内細菌がアルギン酸分解の大部分を担っていると考えられた。一方、アワビはpolyM特異的な分解酵素を分泌することから、アワビ消化酵素で分解されにくい部分を分解する消化管内細菌が定住していることが示唆された。 II.アルギン酸分解酵素の特性 ウニ由来アルギン酸分解菌代表株Ud10株は基質特異性を示さないNaCl要求性の強い酵素を誘導的に産生していた。一方、アワビ由来アルギン酸分解菌A431株はpolyG特異的分解酵素以外にも、基質特異性の異なる6種類以上の酵素を産生しており、その中でpolyMに強い特異性を示す分解活性画分およびpolyGに強い特異性を示す分解活性画分の部分精製物について酵素化学的性状を調べた。それぞれの画分の至適反応温度は40℃および30℃と異なっていたが、至適反応温度(pH7.5)および塩類の要求性(100mM NaCl)は同様の性質を示した。
|