P.piscicidaを市販培地で培養し、対数増殖期の頃にその一部に25%の濃度になるように血清を添加し一定時間培養後、菌体から全RNAを抽出した。ブリ腹腔内での培養は、市販培地で培養した菌液を0.5mlの遠心チューブに入れ、蓋の部分を0.22μmのフィルターとし、ブリの腹を最小限の範囲でナイフで切り、そこから腹腔内にチューブを入れ縫合後、ブリを水槽に戻した。一定時間後にチューブを取り出し、菌体の全RNAを抽出した。対照区として市販培地で培養した菌体の全RNAを用いた。抽出した全RNAの濃度および純度を測定後、これを鋳型として逆転写酵素を用いて一本鎖のcDNAを合成した。次いで、このcDNAを鋳型として市販のRAPD-PCR用のプライマーを用いてPCRを行った。PCR産物を比較し、血清添加培地あるいは腹腔内培養で特異的に増幅してきているDNA断片をクローン化した。RAPD法により血清添加培地あるいは腹腔内培養したP.piscicidaのRNAを鋳型としたときに特異的に増幅してきたDNA断片のうち約250〜1500bpの15種類の塩基配列を決定した。決定した塩基配列をインターネット上のBLASTプログラムでホモロジーサーチを行ったところ、大腸菌の機能不明の遺伝子およびブランチ鎖アミノ基転移酵素およびインフルエンザ菌の夾膜合成に関与するUDP-N-アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼと相同性を示すクローンがあった。しかし、他の11クローンはDNAデータバンクに登録されている遺伝子とは全く相同性を示さず未知の遺伝子であった。さらに、これらのDNA断片をプローブとしてRNAドットブロット解析を行ったところ、宿主内の液性因子によりこれらの遺伝子の発現が誘導されていることがわかった。
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