研究概要 |
群体性微細緑藻Botryococcus brauniiは乾燥重量の数10%におよぶ大量の液状炭化水素を生産することが知られており、エネルギー源としての利用が考えられている。エネルギー源として有望なものは、分岐型のトリテルペノイドであるbotryococcene類を生産するB品種と考えられている。B品種のB.brauniiは、botryococceneの他にsqualeneおよびその類縁物質も生産する。squaleneは広く真核生物に分布しているが、その含量は通常非常に低い。例外的に深海性のサメの肝油中に多量に存在しており、化粧品などの原料として需要がある。 山梨県河口湖からB品種に属するB.brauniiを2株を分離し、それぞれKawaguchi-1、-2株と名付けた。これらの株ではbotryococcene類の含量が、前者で凍結乾燥藻体の19%、後者で10%と通常のB品種と比べ低かったが、tetramethylsqualeneの含量が6.8および1.6%と高いという特徴があった。また、Kawaguchi-1株にはtrimethylsqualeneも含まれていた。この株は同一条件で培養しても、他の株より高含量のカロテノイドの細胞間マトリクスに蓄積するため、くすんだ緑色を呈していた。これらのカロテノイドの組成を検討したところ、通常緑藻に分布するケトカロテノイドであるechinenoneの他に、未知成分を含んでいた。それらの化学構造を各種機器分析により解析したところ、tetramethylsqualeneとα,β-carotene、echinenoneがアセタールを介して結合した新規カロテノイドであることがわかり、botryoxanthin類と命名した。これらの結果から、B.brauniiにおけるsqualene関連化合物の分布は従来考えられているより多岐にわたることが明らかになった。
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