本年度はまず、昨年度からの研究を引き継いで、宮崎県の青果物共販を対象に、共販率の低下が経済連による指定市場の集約化を起点として発生していることを明らかにした。すなわち、系統出荷団体が指定市場を絞り込むことによって流通の隙間が拡大し、そこに産地集荷業者等が販路を拡大する。こうした業者系の移出需要の増加によって産地市場の相場が上昇し、生産者の個人出荷を誘発し、共販率が低下してきているのである。 続いて、こうした共販率の低下を防止する上で、経済連主体の協同社会の形態をとる直販組織が重要な役割を果していることを、鹿児島くみあい食品を事例に明らかにした。同社がスーパー・生協への直接販売に取り組む過程で産地、生産者ならびに圃場の選定を始め、細やかな指導を必要とするようになってきた。そこで、同社では、共販外もしくはその予備軍的な生産者をターゲットとして契約生産あるいは集荷活動を実施している。こうして同社は、販売先のニーズに応えると同時に共販率低下を防止することも貢献しているというものである。 さらに、共販の基礎的な組織をなす品目部会について、宮崎県の南宮崎農協の日向夏部会を事例に分析した。同部会では、地場市場の相場によって共販と個人出荷を使い分ける機会主義的な行動を防ぐため、全量共販を参加の条件として部会再編を行い、部会を脱退した組合員についてもグループを進めて一定の取り組みを図るという注目すべき対応をとっていることを明らかにした。 以上のように、本年度の研究はファクトファインディングの段階にとどまり、申請時に計画していた統計分析を含む部門・品目横断的な分析はできなかった。今後の課題としたい。
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