研究概要 |
水供給としての溜池本来の機能を保持しつつ,親水などのアメニティ機能を促進するための妥当な貯水位及びその水位が必要とされる時期などについて明らかにし,それらの貯水位を確保するための方策について,貯水管理の視点から検討した。 第一に,溜池の貯水空間を活用した多面的利用の実態について,アンケートによる全国的な傾向を把握した。その結果,散策,魚釣り,イベントの開催,キャンプ等として多面的に利用されていることが明らかになった。同時に,溜池の水利用及び水位変動パターン等について,現地調査,資料収集等により分析した。その結果,貯水の変動としては灌漑始期減水型,夏季減水型,貯水温存型の3タイプに大別された。灌漑始期減水型及び夏季減水型の溜池では,春季,夏季において頻繁にみられる多面的利用が制約を受け,その具体的内容としては,景観保全,ボ-ト乗り,魚釣り等であった。 第二に,溜池を含む利水モデルを構築し,多面的利用を目的として組み込んだ溜池の水管理について検討した。現実的な利水モデルとして,香川県内における香川用水より注水を受けている溜池を取り上げ,非渇水年における貯水位,溜池集水域流入量,香川用水注水量,溜池放流量の実測データより,貯水位の変動パターンを明らかにし,灌漑期間の貯水量変動のシミュレーションを行った。その結果,香川用水からの注水が貯水の維持あるいは回復に大きく寄与していることから,安定的な水供給を行い,多面的利用を促進するための水位維持を行うためには,他流域からの注水などの手段が有効であることが判明した。また,必要水位を満水下0.5mと仮定すれば,これを維持するために必要な日注水量は,無降雨の状態で貯水容量換算で最大1.3%程度であると推測された。
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