石垣島の真栄里ダム流域、沖縄県本島の奥川および報得川、タイ国ピン川の4流域においてタンクモデルを用いて流出解析し、真栄里ダム流域と他の流域の解析結果を比較することにより石垣島の河川の流出特性について検討した。 真栄里ダム流域は、森林地帯で、流域面積は4.82km^2と小さく、しばしば梅雨がおわり台風の季節まで小降雨期間が続く。このような真栄里ダム流域との比較のために選んだ三流域は次のような特徴を持つ。奥川は、流域面積は5.44km^2、森林地帯であり一年を通して雨が多い。報得川は、流域面積17.52km^2、畑地帯であり一年を通して雨が多い。ピン川は、流域面積6355km^2、11月から3月まで半年の乾期を持つ。 上のような4流域についてタンクモデルを用いて流出解析し次のような結果を得た。 (1)真栄里ダム流域は奥川流域と同様に最上段タンクの浸透孔が報得川のものより大きく、森林地帯での浸透能の大きさを表している。 (2)沖縄県の河川とピン川の比較においては、小流域では基底流出が少ないため、最下段タンクの流出孔が大流域のものより大きく減衰が速い。また、小流域では最上段タンクの流出孔が大きく洪水のピークが鋭く速く終わることを表している。 (3)ピン川流域は半年の乾季を持ち、雨季の初めは損失雨量が多く流出率は低い。真栄里ダム流域においても、約1ケ月の小降雨期間のあとには同様の現象が見られた。 以上より、真栄里ダム流域は沖縄県の他の河川流域と大きな違いはないが、小降雨期間後には半年の乾季を持つ流域と同様の流出特性を示すことが認められた。
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