研究概要 |
マウス・ラットの初期胚で特異的に発現する新規の遺伝子を同定することを目的として、本研究を行った。 マウス・ラットの受精卵を採取するため、2種の性腺刺激ホルモン(Pregnant Mare Serum Gonadtropin ; PMSG, human Chorionic Gonadtropin ; hCG)を用い、マウスで平均1匹当たり15個の受精卵が、ラットでは平均1匹当たり10個の受精卵が採取できた。これら受精卵をある程度の個数プールし、total RNAを抽出、逆転写酵素によりcDNA合成を行った。最初に、ディファレンシャルディスプレイを行い、任意に設定したプライマーにより特異的に増幅および消失したバンドを検出した。そのバンドを切り出し、同一のプライマーを用い、再度増幅後.クローニングを行った。本方法により数種類のバンドが検出され、そのうち再度増幅できたものについてホモロジー検索を行った。そのひとつは、ラット生殖系列T細胞レセプター、ベータ鎖(90%)および、ラットの細胞分化に関する遺伝子と相同性(71%)を示した。しかしながら、当方法で増幅されるメッセンジャーRNAはポリAから逆転写を始めるため、5'末端のシークエンス(メッセンジャーRNA全体)については、さらにクローニング等を行わなければならない。また、今回増幅された遺伝子が新規遺伝子であることを、確認するために更なる解析(ノーザンによる初期胚での発現、ゲノムレベルのエクソン-イントロンボーダーの解析、特異抗体による組織レベルでの発現の解析)等を行う必要がある。サブトラクション法を用いた同様の試みについては、メッセンジャーRNAサンプル(受精卵の数による)量が少なすぎたために、良好な結果が得ることができなかった。今後、サブトラクション法の改良と、今回検出された遺伝子について解析する予定である。
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